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数学教育学会、会長挨拶
会長就任にあたって
落合卓四郎

1959年創設の数学教育学会は数学者と数学教育専門家が数学教育において協力することを旨として起動されました。学会のホームページで「当学会(のミッション)は、数学・数学教育と情報・情報教育の立場から数学教育の研究をおこない、関係部門と協力して学術文化の向上発展に寄与することを目的としております」と宣言されています。その数学教育学会会長への就任(2009年4月から)にあたり挨拶を申し上げます。
本学会創立以来、2002年まで横地清先生が初代会長を、2002年より前会長の藤田宏先生が2代目会長に就任されました。両会長の強力なリーダーシップのもとに、今日まで数学教育学会はそのミッションにふさわしい学理と実践の成果をあげてきました。会員諸氏は教育現場での実践経験を踏まえた研究成果で本会を盛り上げてこられたと推測します。ところで、私は一般数学教育の現場を全く経験したことがなく、会員としての実践研究経験がなく「学びて思わざれば即ち罔し」の心境にあります。
会の運営については、文字通り「右も左も、上も下も、前も後も」分らぬ身ながら会長にご指名いただき就任しました。幸いにも旧執行部の多くの方が引き続き執行部を担っていただける体制をいただいたので、ご指導いただきながら勉強し経験を積んでゆく所存です。ともかく「売り家と唐様で書く3代目」にならぬよう学会運営に心を砕きます。
このたび指導要領の改訂にともない、統計が初等中等教育現場に本質的に導入されることになりました。本学会も統計学会と共同で教育現場に根づくように努力をすることになっております。私は前会長のこの政策をさらに進めたいと思っています。
米国でよく話題になる以下の小話があります。 世の中に3種類の嘘がある。
・第1は「真っ赤な嘘、例えば天動説を説く」
・第2は「人を騙す嘘、悪質な場合は詐欺になる」
・第3は「統計の嘘」
わが国の場合マスメディアが多用する世論調査のほとんどが統計の嘘の部分をかなり含んでいます。統計教育の目的は国民が統計の嘘をつかない、統計の嘘に騙されない素養をつけることではないでしょうか。
この政策を遂行するに当たって、藤田前会長が述べていらっしゃる以下の警鐘を心に留めたいと思います。
「統計学会の統計教育委員会との協力は貴重であり,今後も大いに頼りにせねばなりませんが,それに依存しすぎると,新指導要領の実施成功に向けての,数学教師・数学教育関係者へ啓発・連帯,あるいは,我が数学教育学会内部での(統計教育実践)戦力増強の方途が見えにくくなりましょう.入試を視野においた大学の数学担当者への説得も「統計の専門家が推す」だけでは抵抗係数が小さくなりません.「数学教育の立場からのフィージブルな提言」が意外に効果があるのではないでしょうか.
もう一つ気に入っている以下の話を紹介して私のご挨拶とします。
先進国と呼ばれる国々がG7なるクラブを組織していた時代がありました。そのころある著名な数学者がこんなことを言ったことを思い出します。「ある国が先進国に入るためには、次の4段階が必要である
・(第1段階)高等学校レベルまでの数学の教科書を自前で編修できる。
すなわち他国の教科書の翻訳ではない。
・(第2段階)オリンピックを招致している
・(第3段階)万国博覧会を開催している
・(第4段階)世界数学者会議(ICM)を招致している
国の繁栄は数学教育に始まり数学研究に終わるということであろうか?