会長挨拶
数学教育学会 会長 岡本 久
数学の教育は一見地味ですが、社会への貢献はたいへん大きなものがあります。数学教育の使命は大きく、後世への影響は計り知れません。デジタル社会といった言葉が頻出する昨今ではなおさらです。こうしたときに会長に選任されたことは大変な名誉でありますが、同時にわが身の能力を見るに、漠然とした不安を感じております。
数学教育というものはエリート教育でしかない、あるいは大学受験のための必要悪であると思っている人もいるようですが、そういった考え方はどちらも正しくはないと信じています。「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」と言いますから、数学的な教養を持つ社会人を増やすためには、初等・中等・高等教育を通じて、数学を楽しんでやれる環境と指導者が必要です。限られた予算の中でそうしたものを提供することは、下手な未解決問題に挑戦するよりもはるかに頭を悩ませる問題であると思います。これを皆さんのお知恵を拝借しながら考えてゆきたいと思います。
数学教育学会の元会長である落合卓四郎先生のおっしゃっておられますように、本学会の活動はできるだけ多くの人々の共同作業が必要ですから、今後も若い人材に入会していただき、変革の芽を育ててゆかねばなりません。ぜひ、会員皆さんのお力添えをお願い申し上げます。